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通院の付き添いに疲れを感じているご家族へ
半日休みを取って車を出し、院内では転ばないよう気を張り続ける。それが月に何度も重なれば、疲れがたまるのも無理はありません。付き添いの負担を軽くしながら、親御さまのお口のケアを続けていく方法はあります。 通院間隔のご相談、外部サービスの活用、訪問歯科診療という3つの工夫を順に整理します。
この記事の要点まとめ
- 通院間隔や診療時間について歯科医師へ相談することで、付き添いの負担を調整できる場合があります
- 介護タクシーや通院介助など外部サービスの活用も選択肢として考えられます
- 通院が難しくなった段階では、訪問歯科診療への切り替えも一つの方法です
親の歯医者通院で付き添い負担が重くなりやすい主な要因

「どうしてこんなに大変なのだろう」と感じたとき、その理由を言葉にしておくと、次の一手が見えてきます。
仕事の調整や待ち時間による時間的制約の増大
歯科の処置は一度で終わらないことも多く、内容によっては数回に分けて進みます。そのたびに移動、受付、診療、会計と時間が積み重なり、半日単位で予定が埋まってしまうことも珍しくありません。パート勤務のかたなら、シフト交代をお願いする気兼ねも重なります。あと何回かかるのか読めないまま予定を組む——この見通しの立ちにくさが、時間的な圧迫感をいっそう強めます。
車椅子移動や移送に伴う身体的・精神的な疲労
自家用車への乗り降り、段差の越え方、院内での移動介助。ひとつひとつは短い動作でも、転倒しないよう気を配り続ける緊張が伴います。介助する側の腰や肩にかかる負担も見過ごせません。厚生労働省も、高齢期は転倒が生活機能の低下につながりやすい点を注意点として挙げています1。「気をつけていれば大丈夫」と自分に言い聞かせ続けること自体が、静かな疲れとして残っていきます。
通院を諦めることで生じるむし歯や入れ歯トラブルへの不安
それでも付き添いをやめられないのは、中断した先が想像できてしまうからでしょう。合わない入れ歯を使い続ければ食事のしづらさにつながることがありますし、むし歯や歯周病が進むと、食べられるものが少しずつ限られてくる場合もあります。口腔の健康は全身の健康や栄養状態と関わりが深いとも指摘されています2。「手を抜いている」わけではありません。続け方そのものを見直す時期に来ている、と捉えてみてください。
仕事と付き添いを両立するために知っておきたい3つの工夫

ご家族だけで抱え込まない体制をつくることが、結果として通院を続ける力になります。
工夫1:歯科医師へ相談して通院間隔や1回の診療時間を調整する
まず取りかかりやすいのが、歯科医院に事情を伝えることです。「仕事の都合で月に1回しか付き添えません」と具体的に共有していただければ、1回でまとめられる処置を検討したり、優先度の高い部位から順に進めたりと、計画の組み立て方が変わることがあります。当院では専用のカウンセリングルームを設け、治療方針や期間についてご納得いただいたうえで進める方針をとっております。通院回数のご相談は、遠慮ではなく治療計画の一部としてお話しください。院内の機器で詰め物を作製できる体制があれば、通院回数を抑えられるケースもあります。
工夫2:介護タクシーや通院介助などの外部サービスを頼る
移送そのものを外部に任せるという方法もあります。要介護認定を受けているかたなら、介護保険の「通院等乗降介助」をケアプランに組み込める場合があり、乗り降りの介助を受けられます。適用の可否は要介護度や状況によって変わるため、まずはケアマネジャーへの確認から始めましょう。ほかにも市町村が関わる福祉有償運送、介護タクシー、介護保険対象外の民間付き添い代行サービスがあります。自費サービスは1時間あたり3,000円前後からが一つの目安とされますが、事業者ごとに幅があるため見積もりを取っておくとよいでしょう。きょうだいで月ごとに担当を決めて分担する方法も現実的です。
工夫3:通院が困難になった段階で訪問歯科診療の利用を検討する
移動そのものが難しくなってきたなら、歯科医師が自宅へ伺う訪問歯科診療という選択肢があります。移送がなくなるぶん、付き添いの形は大きく変わります。日本歯科医師会も、通院が難しいかたへの在宅歯科医療の広がりについて情報を発信しています3。当院でも訪問診療を承っており、身体が不自由で定期的な通院が難しいかたや、在宅療養中のかたからのご相談をお受けしています。
訪問歯科診療を検討する際の判断基準と相談の流れ
「うちの母は対象になるのだろうか」——その疑問から順に整理していきましょう。
訪問歯科診療の対象となる身体状況と対応可能な治療内容
訪問歯科診療は、通院が難しい状態にあるかたが対象です。歩行が困難、車椅子での移動が中心、認知機能の低下によって外出が負担になっているなど、背景はさまざま。対応する内容は、むし歯の処置、入れ歯の調整や作製、歯石除去を含む専門的口腔ケアなどが中心になります。設備の都合上、院内と同じ処置をすべて行えるとは限らないため、事前の確認が欠かせません。食事に時間がかかる、食べる量が減った、むせやすくなった。こうした変化は、ご相談を考えるひとつの目安になります2。
自宅での準備やご家族の立ち会いに関する実務ポイント
特別な設備は要りません。ベッドの上でも、車椅子に座ったままでも診療は行えます。機材を置ける1畳ほどのスペースと電源があれば整います。うがい用の水やタオルをご用意いただくと進行がスムーズです。立ち会いについては、初回や治療方針を決める場面ではご家族の同席が望ましいものの、毎回必ずというわけではありません。仕事で難しい日は、当日の様子や次回の予定を書面や電話で共有してもらう——そんな取り決めをあらかじめしておくと、任せる側の気持ちにもゆとりが生まれます。
かかりつけ歯科医院やケアマネジャーへの相談手順
手順そのものはシンプルです。まず、これまで通っていた歯科医院に訪問対応の可否を尋ねます。対応がない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ、地域の訪問歯科について相談してみましょう。費用は医療保険が基本で、要介護認定のあるかたの口腔ケア指導などでは介護保険が関わる部分もあります。自己負担割合や訪問にかかる費用を先に確認しておくと、見通しが立てやすくなります。当院は院内もバリアフリー設計で、車椅子のままお入りいただけますので、通院と訪問のどちらが合うかを含めてご相談いただけます。
よくある質問
Q. 親の通院の付き添いは有給休暇として扱われますか?
A. 通常の年次有給休暇を使うほか、勤務先によっては介護休暇の制度を利用できる場合があります。要介護状態のご家族の通院付き添いは介護休暇の対象になり得ますので、就業規則をご確認ください。取得できる日数や賃金の扱いは勤務先ごとに異なります。
Q. 通院の付き添いはすべて自費になりますか?
A. すべてが自費というわけではありません。要介護認定を受けており、ケアプランに位置づけられている場合は、介護保険の「通院等乗降介助」を利用できることがあります。対象外のケースや、車内での見守りを含めた幅広い支援をご希望の場合は、自費の付き添い代行サービスという選択肢になります。
Q. 歯科医院への付き添いは何歳までという決まりがありますか?
A. 年齢の決まりはありません。お子さまの場合は保護者の同意やご説明が必要なため、小学校低学年頃までは同席をお願いすることが多くあります。高齢のかたは年齢ではなく、移動や意思疎通の状況で判断します。ご本人が一人で受診できるかどうかが目安とお考えください。
Q. 認知症のある親を歯科医院に連れて行くとき、気をつける点はありますか?
A. 体調の良い時間帯にご予約を取り、待ち時間が短くなるよう事前にご相談いただくと負担が軽くなります。ご本人が不安を示すときは無理に進めず、短時間の受診から慣れていく進め方もあります。診療への抵抗が強い場合は、環境が変わらない訪問歯科診療のほうが落ち着いて受けていただけることもあります。
Q. 訪問歯科診療でも入れ歯の調整はできますか?
A. 入れ歯の調整や新しく作製する対応は、訪問診療で行われることの多い処置のひとつです。ただし状態によっては院内での対応が望ましい場合もありますので、まずは現在のご様子をお伝えいただき、対応範囲をご確認ください。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
3. 公益社団法人 日本歯科医師会 https://www.jda.or.jp/
1999年 大垣市民病院 研修医
2001年 県立多治見病院口腔外科 勤務
2002年 河合歯科医院 勤務医
2007年 河合歯科医院 副院長 就任
2015年 河合歯科医院 院長 就任
2019年 医療法人社団河合歯科医院 理事長 就任
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